こころ、からだによいものを産み出す


                      水戸合氣修練道場長 坂谷 康弘

 昨年、平成25年の正月三が日明けの4日、私は入院した。病名は糖尿病。健康診断で4年以 上前から警告があったが、無視し続けた結果がこれだった。病気への不勉強から、インシュリン を打つことを拒んだが、入院患者の中で一番数値が悪いと断罪され、許されなかった。ちなみに、 入院患者の中で私が一番、若かった。 糖尿病は症状が進めば進むほど、身体が蝕まれていく。血が毒に侵され、血管が傷つき、血の巡 りが悪くなるからだ。
 その入院中に、病魔が進んだ患者たちを見ることができた。 泣いている。痛みで、もどかしさで、辛さで、苦しみで、悲しみで泣いている。看護する者もど う接して良いか分からない。地獄の苦行を見た思いだった。自分もそうなるのではないかと心底 怖れた。 そして、気づいた。謙虚さが大切だと。謙虚であれば、欲に溺れることはない。人と比べて、勝 手に焦ることもない。あらゆることに素直に耳を傾け、心と体に良いものをだけを取り込み、産 み出す。
 この1年間で、新たな趣味が見つかった。雑多なテレビ番組を見ることが少なくなった分、美術 館、博物館を巡っての文化鑑賞が増え、音楽はクラシックが多くなった。内田先生とも美術館を 巡ったり、クラシック音楽の話もすることができた。また、字の練習も兼ねて、5月から母親や 子どもに手紙を毎週書いている。おかげで、内田先生からも字がうまくなったと褒められた。一 つずつ、良く生まれ変わっていき、うまく転じていくことが感じられる。おかげで、血糖値も正 常値に落ち、キープしている。薬もない。合氣道に関わっただけで健康になったと自負できる。
  合氣道は五体の響きが大事と大先生は言う。肚からの大音声を身体中、宇内に届くよう響かせ、 結びをなす。みそぎし、血の流れをさらに良くすることが稽古の効能。さあ、より長く人生を楽 しむために稽古に励み、よいものをたくさん見聞きしようではないか。

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